死なないで。

2002年3月11日
今からそう、11年前。
職場でどうしようもないくらい好きな人ができた。
わりと一目惚れ(どんな日本語じゃ!)だった。
でも、一緒に働くおばちゃんからは、
「あの人はやめたほうがいいよ」
と釘を刺された。
理由は程なくして分かった。
情緒不安定・・・頭がゆるい・・・精神病患者・・・。
周囲の彼女に対する評価のすべて。
それでも、彼女は良く笑った。
笑顔がすごく輝いて見えた。
誰が何と言っても、彼女の笑顔を守りたいと思った。

職場の人たちのクレームで、彼女がクビになりそうだと耳打ちされた。
理由は仕事に対する集中力の欠如と、度重なる欠勤。
オレには会社の決定を覆すことなんて出来ない。
ただ不安だけが胸に残った。
躁と鬱が彼女を襲っている状態で、突き放されたと感じたらどうなるか、それが怖かった。
会社からクビを宣告される前に彼女を説得し、自分から辞めてもらう。
これしかないと思った。

しかし、オレは心底自分が馬鹿だと思った。
彼女が会社を辞めて3日後、彼女は全身に灯油をかぶり焼身自殺を図った。

会社を辞めた彼女は、ずいぶん落ち込んでいた。それこそ電話にもでないくらいに。
オレはしばらくそっとしておこうと思っていた。
そのうち気持ちも落ち着いてくれるだろう。また電話で馬鹿話しをしよう。今度は彼女が傷付かないように、いつも彼女のことだけを見ていると言おう。
そう決めていた。

決めていたんだ。

「あんたの・・・あんたのせいで!!」
はたかれた頬の痛みより、彼女の妹の言葉と、憎しみのこもった目の衝撃が、オレをデク人形にしていた。
幸い彼女は一命を取りとめた。それでも全身の火傷は予断を許さない状況だったという。
人事みたいな言い方だけど、オレは彼女の状態を人づてに聞くことしか出来なかった。
彼女の家族に拒否されていたのだ。
当然、入院先も知らされていない・・・。

彼女の入院した病院を探してうろつくが、自殺未遂で搬送された患者は特に、その所在を教えてはくれないらしい。
どうしようもなく過ごした1ヶ月。
彼女がビルから投身自殺をしたと聞かされた。

いっぱい泣いた。
いっぱい謝った。
いっぱい、いっぱい後悔した。

気が付いたら、何も出来ない男になっていた。

心から笑うようになるまで4年かかった。

また人を好きになるまで10年かかった。

強くなる必要はないよ。
逃げてもいいんだよ。
全部捨ててもいいんだよ。
それであなたが安心できるなら。

でも、死なないで。
自分で自分の身体を虐めないで。

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