好評かも知れない(反応ないから分からん)ので、とりあえず続けます(笑)
夏の話題を先取りしたシリーズ第3弾です。

九州じゃチョイ知れの心霊スポットである犬鳴峠まで、兄サたちがドライブに行くと言い出した。
17歳だったオレにもお呼びがかかったが、
「冗談。お前らも止めとき」
と一蹴。
「行かんて。こいつ臆病やけん」
と兄サの棘を含んだお言葉。
兄サは幽霊のゆの字も見たことがない。
っていうか、気配すら感じたことがない奴なので、自分がしていることの意味も理解していない。
結局オレの言葉を無視して出発。

さて、ここからは同行者に訊いた話し。
一行は2台の車に分乗。一路峠を目指していたが、途中横転したバスを目撃しつつ素通り。
途方に暮れている運転手さんが気にかかり、皆の意見が一致してUターン。
その間2、3分のことだったが、バスは運転手もろとも消失していた。
初めての霊体験に興奮気味の一行は、恐れることなく犬鳴旧トンネルへ。
無駄に賑やかに怖がりながら、トンネルを徒歩で通行。
ガイド役のKくんが、同行者の中の一人のUくんを手招きし、指差している所を注目するように指示。
言われるまま凝視するUくん。
次の瞬間、悲鳴を挙げながら出口に疾走。
他の奴らもそれに習う。
聞けば泣いている女の子(推定5、6歳)が、突然目の前に現れたそうな。
愉快に笑いながら、歩いてトンネルを出てくるKくん。次にトンネルの前で記念撮影。
んでもってトンネル出口の電話BOXも撮影。
ついでに記念碑(?)も撮影。
帰りたいと泣く女性陣の要望を入れ、ようやく帰宅。
しかし、さすがは犬鳴峠。
興味本位で来た奴らを、只では返しません(笑)
走行する車の中で、女性があるものを発見。
「ああ、おばあちゃんだねぇ」
とKくん。
おばあちゃん、対向車線の車の屋根にキチンと正座している。
他の車とすれ違うたびにピョンと移動している。
自分たちの車に乗られたときは、失神せんばかりの悲鳴を挙げる。
福岡市内を駆け抜け、海岸沿いを走る一行は、すでにぐったりしていた。
「あ・・・」
バックミラーを覗いたKくんの一言。
「な、何?」
敏感に反応する女性たち。
「・・・追い駆けてきた」
ポツリと呟くKくん。
恐慌をきたす車内。
「逃げて!逃げてよー!!」
「間に合わんて」
やれやれと言った感じで言い切るKくんを、同乗した女性は絞め殺してやりたいと思ったらしい。
次の瞬間、車の中央を突き抜けるように、若い女性(推定24、5歳)の頭(セミロングでなかなかの美人)が車内に侵入してきた。
凍りつく車内。
「激し過ぎる恐怖では、気絶することも出来ない」(同行者の女性:談)
美人の頭は車内を見まわし、運転中のKくんに向かい、
「そこの人(後部座席で固まっているSくん)のお父さん、気を付けろって。おばあさんも気に入ったって言うけど、また来る?」
「どうだろう。何で?」
「話したいから、また来て欲しいって」
そう言って、消えていった。(Kくん同時通訳)
「だと。また行く?」
言われた男Sくん、呆然とKくんを見る。
こうして一行の旅は終わった。

粗塩を持って出迎えたオレに、満足気に頷くKくん。
泣きながらオレの部屋に入って来た女性たちは、口々にオレの言うことを聞けば良かったと反省するが、一向に帰ろうとしない。
Kくんに事情を聞いたあと、兄サに見たかと確認。
「みんな無意味に騒いで楽しかった」
あんた、ダメだ。

翌日、オレの部屋から出ようとしなかった女性たち(結局泊まって行った)に、何でオレの部屋にくる?と訊ねる。
「怖くなくなるから」
「落ち着くから」
「この部屋が一番安心する」
「さあ?」
Kくん、笑いながら、
「お前がおるけんた。こん部屋には来ぃきらんけんなぁ」
だからと言って、いつもいつもオレの部屋を避難所代わりにするんじゃない。

後日談。
犬鳴峠の写真の現像が終わったと、オレの部屋に集まった参加者たち。
こんなもの現像に出さないでとお叱りを受けたと前置きしながら、Kくんは出来た写真をトランプのように裏返しで広げる。
「幽霊映ってる?」
と懲りずに手を伸ばす女の子Eさん。
見た途端に写真を取り落とし、ギャッと息を呑む。
他の娘Yさんが好奇心でそれを拾い、隣の娘Mと一緒に見る。悲鳴。
奪い取るようにUくん。絶句。
それを覗いてDくんとSくん。蒼白。
固まったUくんから写真を取り上げ、Kくんがオレに手渡す。
トンネル前の記念写真。
白い霞が右半分を覆っていた。
紛れもなく苦悶の表情を浮かべた女(推定22、3歳)の生首。
「これ、出てくるぞ」
とオレ。
「ヤバかろ?」
と楽しそうなKくん。
写真の女、コッチを睨みながら左に移動中。
オレの言葉に、女の子が恐々と覗きこむ。
「いやー!こっち睨んじょる!!」
「これ出てきたらどがんなる!?」
「消えるか憑くか・・・よな?」
のんきに答えるKくん、オレに同意を求める。
「憑く・・・やろ」
再び恐慌をきたす周囲を無視し、Kくんを睨むオレ。
「そいけん、行くな言うたやろが」
「どうする?」
「巻き込むなや」
もう写真全体に広がる白い霞。
ため息ついて、仏壇から線香を持ち出し、着火。
灰皿からの優しいかほりが周囲を包み、オレは光明真言を唱えつつ写真とネガに火を着ける。
「おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん」
「なむだいし へんじょうこんごう」
お題目まで唱えてやって終わり。
「それがオレには出来んもんな」
とKくん。
「寺に持ってけよ!」

このとき、兄サは自分の部屋で睡眠中でした。
チャンチャン。


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