記念日記(その3)「犬鳴峠でつかまえて(笑)」
2002年4月11日好評かも知れない(反応ないから分からん)ので、とりあえず続けます(笑)
夏の話題を先取りしたシリーズ第3弾です。
九州じゃチョイ知れの心霊スポットである犬鳴峠まで、兄サたちがドライブに行くと言い出した。
17歳だったオレにもお呼びがかかったが、
「冗談。お前らも止めとき」
と一蹴。
「行かんて。こいつ臆病やけん」
と兄サの棘を含んだお言葉。
兄サは幽霊のゆの字も見たことがない。
っていうか、気配すら感じたことがない奴なので、自分がしていることの意味も理解していない。
結局オレの言葉を無視して出発。
さて、ここからは同行者に訊いた話し。
一行は2台の車に分乗。一路峠を目指していたが、途中横転したバスを目撃しつつ素通り。
途方に暮れている運転手さんが気にかかり、皆の意見が一致してUターン。
その間2、3分のことだったが、バスは運転手もろとも消失していた。
初めての霊体験に興奮気味の一行は、恐れることなく犬鳴旧トンネルへ。
無駄に賑やかに怖がりながら、トンネルを徒歩で通行。
ガイド役のKくんが、同行者の中の一人のUくんを手招きし、指差している所を注目するように指示。
言われるまま凝視するUくん。
次の瞬間、悲鳴を挙げながら出口に疾走。
他の奴らもそれに習う。
聞けば泣いている女の子(推定5、6歳)が、突然目の前に現れたそうな。
愉快に笑いながら、歩いてトンネルを出てくるKくん。次にトンネルの前で記念撮影。
んでもってトンネル出口の電話BOXも撮影。
ついでに記念碑(?)も撮影。
帰りたいと泣く女性陣の要望を入れ、ようやく帰宅。
しかし、さすがは犬鳴峠。
興味本位で来た奴らを、只では返しません(笑)
走行する車の中で、女性があるものを発見。
「ああ、おばあちゃんだねぇ」
とKくん。
おばあちゃん、対向車線の車の屋根にキチンと正座している。
他の車とすれ違うたびにピョンと移動している。
自分たちの車に乗られたときは、失神せんばかりの悲鳴を挙げる。
福岡市内を駆け抜け、海岸沿いを走る一行は、すでにぐったりしていた。
「あ・・・」
バックミラーを覗いたKくんの一言。
「な、何?」
敏感に反応する女性たち。
「・・・追い駆けてきた」
ポツリと呟くKくん。
恐慌をきたす車内。
「逃げて!逃げてよー!!」
「間に合わんて」
やれやれと言った感じで言い切るKくんを、同乗した女性は絞め殺してやりたいと思ったらしい。
次の瞬間、車の中央を突き抜けるように、若い女性(推定24、5歳)の頭(セミロングでなかなかの美人)が車内に侵入してきた。
凍りつく車内。
「激し過ぎる恐怖では、気絶することも出来ない」(同行者の女性:談)
美人の頭は車内を見まわし、運転中のKくんに向かい、
「そこの人(後部座席で固まっているSくん)のお父さん、気を付けろって。おばあさんも気に入ったって言うけど、また来る?」
「どうだろう。何で?」
「話したいから、また来て欲しいって」
そう言って、消えていった。(Kくん同時通訳)
「だと。また行く?」
言われた男Sくん、呆然とKくんを見る。
こうして一行の旅は終わった。
粗塩を持って出迎えたオレに、満足気に頷くKくん。
泣きながらオレの部屋に入って来た女性たちは、口々にオレの言うことを聞けば良かったと反省するが、一向に帰ろうとしない。
Kくんに事情を聞いたあと、兄サに見たかと確認。
「みんな無意味に騒いで楽しかった」
あんた、ダメだ。
翌日、オレの部屋から出ようとしなかった女性たち(結局泊まって行った)に、何でオレの部屋にくる?と訊ねる。
「怖くなくなるから」
「落ち着くから」
「この部屋が一番安心する」
「さあ?」
Kくん、笑いながら、
「お前がおるけんた。こん部屋には来ぃきらんけんなぁ」
だからと言って、いつもいつもオレの部屋を避難所代わりにするんじゃない。
後日談。
犬鳴峠の写真の現像が終わったと、オレの部屋に集まった参加者たち。
こんなもの現像に出さないでとお叱りを受けたと前置きしながら、Kくんは出来た写真をトランプのように裏返しで広げる。
「幽霊映ってる?」
と懲りずに手を伸ばす女の子Eさん。
見た途端に写真を取り落とし、ギャッと息を呑む。
他の娘Yさんが好奇心でそれを拾い、隣の娘Mと一緒に見る。悲鳴。
奪い取るようにUくん。絶句。
それを覗いてDくんとSくん。蒼白。
固まったUくんから写真を取り上げ、Kくんがオレに手渡す。
トンネル前の記念写真。
白い霞が右半分を覆っていた。
紛れもなく苦悶の表情を浮かべた女(推定22、3歳)の生首。
「これ、出てくるぞ」
とオレ。
「ヤバかろ?」
と楽しそうなKくん。
写真の女、コッチを睨みながら左に移動中。
オレの言葉に、女の子が恐々と覗きこむ。
「いやー!こっち睨んじょる!!」
「これ出てきたらどがんなる!?」
「消えるか憑くか・・・よな?」
のんきに答えるKくん、オレに同意を求める。
「憑く・・・やろ」
再び恐慌をきたす周囲を無視し、Kくんを睨むオレ。
「そいけん、行くな言うたやろが」
「どうする?」
「巻き込むなや」
もう写真全体に広がる白い霞。
ため息ついて、仏壇から線香を持ち出し、着火。
灰皿からの優しいかほりが周囲を包み、オレは光明真言を唱えつつ写真とネガに火を着ける。
「おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん」
「なむだいし へんじょうこんごう」
お題目まで唱えてやって終わり。
「それがオレには出来んもんな」
とKくん。
「寺に持ってけよ!」
このとき、兄サは自分の部屋で睡眠中でした。
チャンチャン。
夏の話題を先取りしたシリーズ第3弾です。
九州じゃチョイ知れの心霊スポットである犬鳴峠まで、兄サたちがドライブに行くと言い出した。
17歳だったオレにもお呼びがかかったが、
「冗談。お前らも止めとき」
と一蹴。
「行かんて。こいつ臆病やけん」
と兄サの棘を含んだお言葉。
兄サは幽霊のゆの字も見たことがない。
っていうか、気配すら感じたことがない奴なので、自分がしていることの意味も理解していない。
結局オレの言葉を無視して出発。
さて、ここからは同行者に訊いた話し。
一行は2台の車に分乗。一路峠を目指していたが、途中横転したバスを目撃しつつ素通り。
途方に暮れている運転手さんが気にかかり、皆の意見が一致してUターン。
その間2、3分のことだったが、バスは運転手もろとも消失していた。
初めての霊体験に興奮気味の一行は、恐れることなく犬鳴旧トンネルへ。
無駄に賑やかに怖がりながら、トンネルを徒歩で通行。
ガイド役のKくんが、同行者の中の一人のUくんを手招きし、指差している所を注目するように指示。
言われるまま凝視するUくん。
次の瞬間、悲鳴を挙げながら出口に疾走。
他の奴らもそれに習う。
聞けば泣いている女の子(推定5、6歳)が、突然目の前に現れたそうな。
愉快に笑いながら、歩いてトンネルを出てくるKくん。次にトンネルの前で記念撮影。
んでもってトンネル出口の電話BOXも撮影。
ついでに記念碑(?)も撮影。
帰りたいと泣く女性陣の要望を入れ、ようやく帰宅。
しかし、さすがは犬鳴峠。
興味本位で来た奴らを、只では返しません(笑)
走行する車の中で、女性があるものを発見。
「ああ、おばあちゃんだねぇ」
とKくん。
おばあちゃん、対向車線の車の屋根にキチンと正座している。
他の車とすれ違うたびにピョンと移動している。
自分たちの車に乗られたときは、失神せんばかりの悲鳴を挙げる。
福岡市内を駆け抜け、海岸沿いを走る一行は、すでにぐったりしていた。
「あ・・・」
バックミラーを覗いたKくんの一言。
「な、何?」
敏感に反応する女性たち。
「・・・追い駆けてきた」
ポツリと呟くKくん。
恐慌をきたす車内。
「逃げて!逃げてよー!!」
「間に合わんて」
やれやれと言った感じで言い切るKくんを、同乗した女性は絞め殺してやりたいと思ったらしい。
次の瞬間、車の中央を突き抜けるように、若い女性(推定24、5歳)の頭(セミロングでなかなかの美人)が車内に侵入してきた。
凍りつく車内。
「激し過ぎる恐怖では、気絶することも出来ない」(同行者の女性:談)
美人の頭は車内を見まわし、運転中のKくんに向かい、
「そこの人(後部座席で固まっているSくん)のお父さん、気を付けろって。おばあさんも気に入ったって言うけど、また来る?」
「どうだろう。何で?」
「話したいから、また来て欲しいって」
そう言って、消えていった。(Kくん同時通訳)
「だと。また行く?」
言われた男Sくん、呆然とKくんを見る。
こうして一行の旅は終わった。
粗塩を持って出迎えたオレに、満足気に頷くKくん。
泣きながらオレの部屋に入って来た女性たちは、口々にオレの言うことを聞けば良かったと反省するが、一向に帰ろうとしない。
Kくんに事情を聞いたあと、兄サに見たかと確認。
「みんな無意味に騒いで楽しかった」
あんた、ダメだ。
翌日、オレの部屋から出ようとしなかった女性たち(結局泊まって行った)に、何でオレの部屋にくる?と訊ねる。
「怖くなくなるから」
「落ち着くから」
「この部屋が一番安心する」
「さあ?」
Kくん、笑いながら、
「お前がおるけんた。こん部屋には来ぃきらんけんなぁ」
だからと言って、いつもいつもオレの部屋を避難所代わりにするんじゃない。
後日談。
犬鳴峠の写真の現像が終わったと、オレの部屋に集まった参加者たち。
こんなもの現像に出さないでとお叱りを受けたと前置きしながら、Kくんは出来た写真をトランプのように裏返しで広げる。
「幽霊映ってる?」
と懲りずに手を伸ばす女の子Eさん。
見た途端に写真を取り落とし、ギャッと息を呑む。
他の娘Yさんが好奇心でそれを拾い、隣の娘Mと一緒に見る。悲鳴。
奪い取るようにUくん。絶句。
それを覗いてDくんとSくん。蒼白。
固まったUくんから写真を取り上げ、Kくんがオレに手渡す。
トンネル前の記念写真。
白い霞が右半分を覆っていた。
紛れもなく苦悶の表情を浮かべた女(推定22、3歳)の生首。
「これ、出てくるぞ」
とオレ。
「ヤバかろ?」
と楽しそうなKくん。
写真の女、コッチを睨みながら左に移動中。
オレの言葉に、女の子が恐々と覗きこむ。
「いやー!こっち睨んじょる!!」
「これ出てきたらどがんなる!?」
「消えるか憑くか・・・よな?」
のんきに答えるKくん、オレに同意を求める。
「憑く・・・やろ」
再び恐慌をきたす周囲を無視し、Kくんを睨むオレ。
「そいけん、行くな言うたやろが」
「どうする?」
「巻き込むなや」
もう写真全体に広がる白い霞。
ため息ついて、仏壇から線香を持ち出し、着火。
灰皿からの優しいかほりが周囲を包み、オレは光明真言を唱えつつ写真とネガに火を着ける。
「おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん」
「なむだいし へんじょうこんごう」
お題目まで唱えてやって終わり。
「それがオレには出来んもんな」
とKくん。
「寺に持ってけよ!」
このとき、兄サは自分の部屋で睡眠中でした。
チャンチャン。
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